厚化粧

今朝電車の中で化粧する女性を見かけた.

齢20ちょいだろうか,おそらく大学生だろう.
電車の中で化粧をする女の子はよく見かけるが,彼女の行動は常軌を逸していた.

鏡を見ながらかチークを塗る → 鏡とチークをバッグにしまう → 間髪いれず同じ鏡を取り出し,マスカラを塗る → 鏡とマスカラをバッグにしまう → すかさず同じ鏡を出し,口紅(リップ?)を塗る → 鏡と口紅をしまう → その刹那,鏡を取り出し,チェックする → 鏡をしまう → 直後,同じ鏡を取り出してアイシャドウらしきものを塗る → 鏡をしまう → 鏡を出す → 先ほど終わったはずのチークを繰り返す …

とにかく,化粧を続けるならなぜ鏡をしまおうとするのだ? それが気になって仕方がない.

そもそも時間がなくて電車の中で化粧をしている.そういう具合には見えない.もう地肌なんてこれっぽっちも見えないほど隠れてしまい,原型がよく分からないほど厚化粧状態でなお,化粧を続けている.
自分の顔にコンプレックスでもあるのだろうか? いや,おそらくタバコ中毒と似たようなものだろう.手持ちぶたさを化粧で過ごしている.化粧をしていると,落ち着く.そんな感じに伺えた.

彼女は満員状態の電車の中で自分の隣にバッグを置き,目の前に人が立っていても気にすることなく二人分くらいの席を使って化粧を続けていた.化粧中毒自体は問題ではない.問題は,そのことで周りが見えなくなってしまっていることだ.自分のことで精一杯の,かわいそうな女の子になりはててしまっている.

厚化粧が美しいとは,決して同意できない.化粧はスパイスのようなもので,素顔を引き立たせるものなのだ.スパイスのつきすぎた肉は不自然に辛くて不味い.

彼女は暇つぶしに化粧をすることで,どんどん自分の顔を不自然にしている.それどころか,その行為のために周りからの冷たい目線さえ食らっている.そしてそれに気づいてすらいない.不幸だ.どうにか救ってやれないか.

そんなことを考えているうちに,彼女は電車を降りた.彼女が降りたホームには,似たように厚化粧の女の子がわんさか歩いている.みんな同じ大学生だろう.中には化粧なんかしなくても綺麗であろう女の子も混じっている.

どうせ外見を化粧で美しくするなら,内面から美しくする化粧も準備しておいてほしいものだ.

そして我々男性は,あらゆる化粧に隠された本質を見抜く力を養いたい.